各障害の解説自閉スペクトラム症(ASD)(3)——感覚過敏・感覚鈍麻、五感が違う世界
ASDの感覚の特性は、音・光・触覚などに過敏または鈍感に反応する状態です。日常生活への影響と、環境を整えるためのヒントを紹介します。
この記事でわかること
- この記事で伝えたいこと:感覚の「違い」は「わがまま」ではなく、本物の苦痛
- 感覚過敏とは——強く・不快に感じる状態
- 感覚鈍麻とは——感じにくい状態
- 感覚特性が日常生活に与える影響
- 今日からできる感覚特性との付き合い方
- まとめ
この記事でわかること
- 感覚過敏・感覚鈍麻とは何か(種類と具体例)
- なぜASDで感覚の違いが生じるのか
- 職場・日常生活への影響
- 今日から使える感覚特性との付き合い方
この記事は、「音・光・服の感触が苦痛」「疲れやすい理由がわからない」と感じているASDの社会人に向けて書いています。
この記事で伝えたいこと:感覚の「違い」は「わがまま」ではなく、本物の苦痛
スーパーの蛍光灯がまぶしすぎて頭痛がする。
シャツのタグが皮膚に当たるだけで集中できない。
逆に、暑さや痛みにほとんど気づかない。
「わがまま」「こだわりが強い」と言われてきたその経験、
実は感覚処理の特性によるものかもしれません。
感覚処理の特性は、2013年のDSM-5改訂でASDの診断基準に正式に追加されました。
それほど重要な特性にもかかわらず、まだ十分に理解されていないのが現状です。
感覚過敏とは——強く・不快に感じる状態
感覚過敏とは、外からの刺激を一般的な人より強く・不快に感じる状態です。
感覚ごとの例を見てみましょう。
| 感覚 | 過敏の例 |
|---|---|
| 聴覚 | 人混みや工事音がひどく苦痛、複数人の会話が混ざると混乱する |
| 視覚 | 蛍光灯・直射日光・画面の明るさが耐えられない |
| 触覚 | 衣類のタグ・縫い目・特定の素材が肌に触れるのが苦痛 |
| 嗅覚 | 香水・食べ物・化学物質の臭いで気分が悪くなる |
| 味覚 | 特定の食感・味への強い拒否反応(偏食につながることも) |
| 固有覚 | 力の加減がわからない、身体の位置感覚が不安定 |
| 前庭覚 | 乗り物酔いが激しい、回転・揺れが苦手 |
「ただの好き嫌い」「わがまま」ではありません。
感覚処理の特性によって、本当に苦痛を感じているんです。
感覚鈍麻とは——感じにくい状態
感覚鈍麻は刺激への反応が低下した状態です。
過敏と鈍麻は、同じ人に共存することもあります。
- 高い体温や痛みに気づかない(体調悪化の発見が遅れる)
- 空腹・満腹感がわかりにくい
- 強い刺激(強い光・大きな音)を求めてしまう(感覚刺激欲求)
「全然平気」に見えても、それが感覚鈍麻によるものという場合があります。
体の異変に気づきにくいため、体調管理が難しくなることもあります。
感覚特性が日常生活に与える影響
感覚過敏・鈍麻は、生活のあらゆる場面に影響します。
- 職場:オープンオフィスの騒音・蛍光灯が集中を妨げる、制服の素材が苦痛
- 食事:特定の食感や味が受け付けず偏食になる
- 社交:飲み会・パーティーなど騒がしい場所が消耗する
- 医療・美容:歯科治療・美容院が強いストレスになる
- 交通:満員電車が身体的苦痛になる
外からはわかりにくいため、「わがまま」「こだわりが強い」と誤解されやすい部分です。
今日からできる感覚特性との付き合い方
完全になくすことは難しいですが、環境を整えることで負荷を大幅に減らせます。
- 聴覚:ノイズキャンセリングイヤホンを使う、静かな作業環境を確保する
- 視覚:サングラス・帽子をかぶる、画面の輝度を下げる、暖色系照明を選ぶ
- 触覚:素材を徹底的に選ぶ(タグなし・縫い目なしの服、天然素材など)
- 全般:刺激の多い環境を避け、定期的な「感覚休憩(ひとり静かにいる時間)」を取る
- 職場への相談:「音・光に過敏な特性があります」と伝え、座席やイヤホン使用の配慮を求める
「合理的配慮」として職場や学校に環境調整を求めることは、法的に認められています(障害者差別解消法)。
「わがままを言っている」ではなく、必要な配慮を求めているだけです。
まとめ
- ASDの感覚処理の特性には「過敏(強く感じる)」と「鈍麻(感じにくい)」の両方がある
- 聴覚・視覚・触覚・嗅覚・味覚・固有覚・前庭覚と幅広い感覚に関わる
- 日常生活の質を大きく左右するが、外からわかりにくく誤解されやすい
- 環境を整えること・合理的配慮を求めることで負荷を大幅に軽減できる
「自分の感覚が普通じゃないのかもしれない」と感じてきた方へ。
あなたの感覚はおかしくない。ただ、少し違う受け取り方をしているだけです。
次回は、限局性学習症(SLD)の解説です。読み・書き・計算の困難は、知能の問題ではありません。
今日から試す3ステップ
- 自分や身近な人に当てはまる困りごとを1つ書く
- 診断名ではなく、必要な配慮や環境を考える
- 困りごとが強い場合は専門窓口に相談する
参考情報・注意
この記事は当事者の経験と一般情報をもとにした読みものです。診断、治療、服薬の判断は医師などの専門家に相談してください。
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