発達障害の歴史自閉症の歴史(1)——カナーとアスペルガー、二人の医師がそれぞれ発見したもの
1943年のカナーと1944年のアスペルガー——ほぼ同時期に、二人の医師が独立して「自閉症」を記述しました。二つの発見が歩んだ全く異なる歴史を解説します。
この記事でわかること
- この記事で伝えたいこと:1943〜44年に二人の医師が独立して「自閉症」を記述したが、その後の歴史は全く異なった
- レオ・カナーの「早期幼児自閉症」(1943年)
- ハンス・アスペルガーの「自閉的精神病質」(1944年)
- なぜ「同時発見」なのに歴史が違ったのか
- 二つの「自閉症」——どう違うの?
- この歴史から学べること
この記事でわかること
- 自閉症を最初に記述した二人の医師とその違い
- なぜ「同時発見」なのに歴史が大きく違ったのか
- 「アスペルガー症候群」という言葉が生まれた経緯
- カナー型とアスペルガー型、現在の位置づけ
この記事は、「自閉症やASDがどのように発見されたのか」「アスペルガー症候群という名前の由来を知りたい」という社会人に向けて書いています。
この記事で伝えたいこと:1943〜44年に二人の医師が独立して「自閉症」を記述したが、その後の歴史は全く異なった
1943年と1944年——第二次世界大戦の最中、ほぼ同時期に、二人の医師が独立して「自閉症」を記述する論文を発表しました。
一人は米国のレオ・カナー、もう一人はオーストリアのハンス・アスペルガー。
二つの発見は似ていながら異なり、その後全く別の歴史を歩むことになります。
「語られなかった発見は、存在しないも同然だった」——この歴史から、記録することの重みを感じます。
レオ・カナーの「早期幼児自閉症」(1943年)
米国の児童精神科医レオ・カナーは、1943年の論文で「自閉症」の概念を医学的に記述した最初の人物です。
カナーは11人の子どもの事例を詳細に観察し、以下の特徴を記述しました。
- 極端な孤立性:他者との情動的なつながりがほとんどない
- 同一性の保持への強いこだわり:環境の変化に激しく抵抗する
- コミュニケーションの困難:言語の発達遅延や反響言語(エコラリア)
- 記憶力の驚異的な高さ:詩・数字・地図の正確な記憶
カナーはこの状態を「早期幼児自閉症(Early Infantile Autism)」と名付けました。
「Autism(自閉症)」という言葉自体は、精神科医ブロイラーが1910年代に統合失調症の症状を表す言葉として使っていたものを借用しています。
ハンス・アスペルガーの「自閉的精神病質」(1944年)
ほぼ同時期の1944年、ウィーンの小児科医ハンス・アスペルガーは「自閉的精神病質」という論文を発表しました。
アスペルガーが観察した特徴はこちらです。
- 社会的相互交流の困難、一方的なコミュニケーション
- 特定分野への深い関心、専門的な知識・興味の偏り
- 言語は正常〜発達良好(カナーの記述と異なり、流暢な話し手が多い)
- 非言語コミュニケーションの不自然さ(アイコンタクト・表情の違和感)
アスペルガーは「ちょっと変わった教授肌の子どもたち」と表現し、知的には高く、特定の分野で才能を発揮できる可能性があると述べました。
なぜ「同時発見」なのに歴史が違ったのか
| 比較 | カナー | アスペルガー |
|---|---|---|
| 発表年 | 1943年 | 1944年 |
| 言語 | 英語 | ドイツ語 |
| 発表媒体 | 米国の主要医学誌 | ウィーンでの発表 |
| その後の影響 | 世界標準として普及 | 数十年間、無視された |
カナーの論文は英語で書かれ、米国の主要医学誌に掲載されました。
一方、アスペルガーの論文はドイツ語で書かれており、第二次世界大戦中に発表されたため、当時の英語圏にはほとんど伝わりませんでした。
語られなかった発見は、存在しないも同然でした。
アスペルガーの研究が英語圏で再評価されるきっかけになったのは、1981年——イギリスの精神科医ローナ・ウィング(Lorna Wing)がアスペルガーの業績を英語で紹介したことです。
ウィング自身も自閉症の子どもの親であり、「アスペルガー症候群(Asperger Syndrome)」という名称を提唱しました。
二つの「自閉症」——どう違うの?
当初は「重い自閉症(カナー)」と「軽い自閉症(アスペルガー)」として区別されていましたが、現在の理解では連続体(スペクトラム)として捉えられています。
| 観点 | カナー型 | アスペルガー型 |
|---|---|---|
| 言語発達 | 遅れることが多い | 正常〜良好 |
| 知的発達 | 多様 | 正常〜高い |
| 気づかれる時期 | 幼少期早期 | 学童期以降が多い |
| 現在の位置づけ | ASDの一部 | ASDの一部(2013年に統合) |
この歴史から学べること
アスペルガー型の特性を持つ人が「見逃されてきた」理由の一部は、アスペルガーの研究が何十年も無視されていたこと。
「アスペルガーって何?」「なぜ自分は診断が遅かったの?」——その答えのひとつが、ここにあります。
また、ローナ・ウィングという一人の親・研究者が声を上げたことで、数十年間無視されていた研究が世界に広まったという事実。
「誰かが声を上げることで、変わることがある」という歴史の実例でもあります。
まとめ
- 1943年カナーと1944年アスペルガーがほぼ同時期に独立して「自閉症」を記述
- カナーの研究は英語圏で広まり、アスペルガーの研究は数十年無視された
- ローナ・ウィングが1981年にアスペルガーを再評価し「アスペルガー症候群」という言葉が生まれた
- 現在は両者を含む「ASD(自閉スペクトラム症)」に統合されている
次回は、自閉症の歴史で最大の「負の遺産」——冷蔵庫マザー説と、その科学的否定を辿ります。
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参考情報・注意
この記事は当事者の経験と一般情報をもとにした読みものです。診断、治療、服薬の判断は医師などの専門家に相談してください。
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