発達史読了約9分

ADHDの歴史(2)——薬物療法の登場と「作られた障害」論争

リタリン(メチルフェニデート)の登場からADHD薬物療法の普及、日本で使われるADHD治療薬の位置づけまでを、確認できる範囲で整理します。

この記事でわかること

  • ADHD薬物療法がどう始まったか(1937年の偶然の発見)
  • 「ADHDは作られた障害か」論争の内容と科学的な反論
  • 日本のADHD薬物療法が世界的に保守的な理由
  • 薬を使うこと・使わないこと、それぞれの意味

この記事は、「ADHDの薬について知りたい」「薬を飲むことへの迷いや疑問がある」という社会人に向けて書いています。


この記事で伝えたいこと:ADHD薬物療法は1937年から始まり、現在も見直され続けている

ADHDの薬物療法は、診断や生活状況を確認したうえで医師と相談して考える選択肢のひとつです。

しかし、そこに至るまでには80年以上の歴史と激しい論争がありました。

「薬を飲むことは逃げだ」「製薬会社の陰謀では?」——これらの疑問には、歴史的背景があります。
その経緯を知ることで、薬との付き合い方を深く考えられるようになります。


1937年:偶然の発見

ADHDへの薬物療法の歴史は、1937年の偶然の発見から始まります。

米国の小児科医チャールズ・ブラッドリー(Charles Bradley)は、行動問題を持つ子どもたちに硫酸アンフェタミン(ベンゼドリン)を投与したところ、学習行動と注意力が著しく改善するという偶発的な発見をしました。

「なぜ興奮薬が多動・衝動性を落ち着かせるのか」——当初は謎でした。
これが後の「ADHDには刺激薬が逆説的に効く」という発見の出発点になります。


1950〜60年代:リタリンの登場

1950年代にメチルフェニデート(商品名:リタリン)が開発され、1960年代にはADHDを持つ子どもへの処方が広がり始めました。

メチルフェニデートは、神経伝達物質の働きに関わる中枢神経刺激薬として使われてきました。
ただし、薬が合うかどうか、副作用がどの程度出るかは人によって異なります。「魔法の薬」のように一般化して考えることはできません。


1990年代:診断・処方件数の急増と論争

1990年代の米国では、ADHDの診断数と投薬処方数が急激に増加しました。

  • 製薬会社による積極的なマーケティング
  • ADHDへの社会的認知の高まり
  • 教育現場での「問題行動への対処」としての処方増加

この時期の具体的な処方件数や増加率は、調査対象や資料によって数字が変わります。この記事では、確認できない統計値を断定しません。


「ADHDは作られた障害か」論争

こうした急増に対し、批判的な声が上がりました。

批判側の主な論点

  • ADHDの診断基準が曖昧で、「普通の子どもの多動」を病気化しているのでは?
  • 製薬会社がADHD啓発キャンペーンに多額の資金を投じ、診断増加を誘導している
  • 薬で「行動を管理する」ことへの倫理的問題
  • 長期投薬の安全性への懸念

反論として示されてきた観点

  • ADHDは複数の国や文化圏で研究・診断されており、単なる流行語では説明しにくい
  • 研究では注意、衝動性、実行機能などに関わる違いが検討されている
  • 困りごとが強い場合、診断や支援につながらないことで学校・仕事・生活に影響が出ることがある
  • 薬物療法は選択肢のひとつだが、適応、副作用、生活状況を医師が確認しながら判断する必要がある

批判と反論のどちらにも一定の合理性があります。重要なのは、「過剰診断への懸念」と「適切な診断の普及」をセットで議論することです。


日本での状況——世界で最も保守的な制度

日本ではリタリンの乱用・依存問題を受け、2007年に小児ADHDへの適応が削除されました(成人うつへの転用乱用が問題視されたため)。

その後、ADHDに使われる薬の選択肢は増えてきました。現在の日本での効能・効果や対象は、PMDAの電子添文や製造販売元の最新情報で確認する必要があります。

薬品名 成分 現在の記事での扱い
コンサータ メチルフェニデート徐放剤 ADHD治療薬として使われる。流通・処方管理に制限がある
ストラテラ アトモキセチン ADHD治療薬として使われる非中枢神経刺激薬
インチュニブ グアンファシン ADHD治療薬として使われる非中枢神経刺激薬
ビバンセ リスデキサンフェタミン 日本では小児期のADHDに関する薬として扱われる。成人への適応がある薬としては記載しない

以前の本文では、ビバンセを「成人2019年」と記載していましたが、成人適応が確認できる記述ではないため削除しました。薬剤ごとの承認時期と現在の適応は混同しやすいため、受診時には最新の電子添文と主治医の説明を確認してください。

また、コンサータやビバンセなど一部の薬は、乱用防止や適正使用の観点から処方・流通管理の仕組みがあります。日本のADHD薬物療法は、薬ごとに適応や管理方法が異なります。


薬物療法の現在の位置づけ

2020年代現在のADHD薬物療法について、この記事では次のように整理します。

  • 適切な診断のもとでの薬物療法は、症状や生活上の困りごとを軽くするための選択肢のひとつ
  • ただし薬だけが答えではなく、心理的・環境的支援との組み合わせが重要
  • 効果や副作用には個人差があり、服用開始・変更・中止は医師と相談して決める

薬について考えるときのヒント

  • 「薬を使うかどうか」は、医師との対話の中で決めるもの
  • 薬の効果・副作用は個人差が非常に大きい
  • 薬物療法と非薬物療法(行動療法・環境調整・コーチング)は組み合わせが基本
  • 薬が合わないと感じたら、医師に相談して代替の選択肢を探す

「薬を飲むことは逃げだ」と思っていた方へ——
高血圧の薬を飲むことを「逃げ」と言わないのと同じです。


まとめ

  • 1937年のブラッドリーの偶発的発見がADHD薬物療法の出発点
  • 1990年代に米国で診断・処方が急増し、「作られた障害」論争が起きた
  • 科学的には脳の違いと治療効果が繰り返し確認されている
  • 日本のADHD薬物療法は、薬ごとに適応や管理方法が異なる
  • 薬は「唯一の答え」ではなく、支援の選択肢のひとつ

次回は自閉症(ASD)の歴史を振り返ります。カナーとアスペルガー、二人の医師の発見と、その後の全く異なる歴史です。

薬物療法の歴史だけでなく、ADHDそのものの特徴を整理したい人は、ADHD(注意欠如・多動症)とはも参考になります。

参考資料と情報確認日

  • PMDA「医療用医薬品 情報検索」(電子添文の確認入口)
  • 厚生労働省・PMDAの医薬品安全性情報、電子添文、各薬剤の製造販売元が公開する医療関係者向け情報

情報確認日:2026年6月20日。PMDA検索結果の個別ページを機械的に取得できなかったため、この記事では確認できない承認年の細部を断定せず、現行添文で確認すべき事項として整理しました。

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  1. 記事の中で新しく知った点を1つ残す
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  3. 必要なら公的情報や専門家の情報で確認する

参考情報・注意

この記事は当事者の経験と一般情報をもとにした読みものです。本文中に参考資料や公的機関・専門機関名がある場合は、あわせて確認してください。診断、治療、服薬の判断は医師などの専門家に相談してください。

著者について

ADHD当事者としての経験を出発点に、公的機関の情報や関連資料を確認しながら、仕事と生活に取り入れやすい工夫を紹介しています。詳しい運営方針は ズレハックについて を確認してください。

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